MENU

「富士酢醸造元・飯尾醸造」5代目・飯尾彰浩、弱者戦略・熱烈ファンづくりと老舗130年の系譜【カンブリア宮殿】

当ページのリンクには広告が含まれています。

こんにちは、奇跡ドバドバ!のtsubasaです。

2024年5月9日のカンブリア宮殿に、飯尾醸造5代目当主、飯尾彰浩さんが出演されました。
熱狂ファンを生む”弱者”の生き残り術
と題され、ファンづくりを超えた熱狂ファンづくりに、カンブリアンが着目したようですね。

企業が100年続くのは、5%たらずと言われています。
飯尾酒造さまは、130年とのこと。
会社の継続はもちろんすごいことですが、その業態と伝統製法を守りつつの経営手腕、その秘訣は、ぜひ触れてみたいところです。

「人に、町に投資せよ」と言う飯尾社長。
思うに、・・・周りに愛される経営方針があるのではないでしょうか。

番組紹介には、下記の記載でした。
------------
お酢業界で、異彩を放っている老舗のお酢メーカー、飯尾醸造。
ミシュランにも選ばれる一流寿司店など、プロが絶賛するお酢だが、そのプロの味が再現できる「手巻き寿司酢」など、家庭向けのお酢も開発し、熱烈なファンを獲得している。
自社で米から作り日本酒まで製造、自前でつくったお酒に酢酸菌を入れ、じっくり発酵させる伝統製法を100年以上守りぬいてきた。飯尾が貫いてきた、大手メーカーとは一線を画す、”弱者”ならではの生き残り戦略とは?
------------

飯尾醸造5代目当主、飯尾彰浩さんの、生い立ちとご家族との関係など、その根底には、じっくり醗酵の、豊かな人間関係づくりが原点となっているのでは? と感じた次第です。

下記、リサーチをまとめてみました。
番組放送の前後にも、楽しんでいただけましたら、うれしいです。

目次

飯尾彰浩さんプロフィール


写真引用:飯野醸造HPより(https://www.iio-jozo.co.jp/)

名前  : 飯尾 彰浩(いいお あきひろ)
生年月日: 1975年生まれ
年齢  : 54歳
出身地 : 京都府区宮津市

株式会社飯尾醸造5代目当主。東京農業大学大学院修了後、東京コカ・コーラボトリングにてメーケティングや営業教育として勤務後、地元宮津に戻り2012年から現職。
伝統的な製法を引き継ぎながらも「富士酢プレミアム」や「ピクル酢」といった新商品、2017年にはイタリアンレストランacetoの経営など、社会性と経済性を両立した経営を実践する。

飯尾彰浩さんの経営者DNA原点・祖父、父

写真左から4代目・飯尾毅、3代目・飯尾輝之助
写真引用:飯野醸造HPより(https://www.iio-jozo.co.jp/)

50年前の祖父の決断

飯尾醸造が無農薬栽培の米を使うようになったのは昭和 39 年(1964年)とのこと。現在、蔵を守る 5 代目当主・飯尾彰浩さんの祖父、輝之助さんの決断でした。

当時、日本の農作物は農薬を大量に使い農作業の効率化を推進する時代でした。
その結果、農薬を撒いた田んぼには人が近づかないよう立ち入り禁止の赤い旗がたてられ、
用水路のドジョウや小魚、カエルなど、生態系が目に見えて崩れていきました。
輝之助さんは「こんな田んぼで作った米から酢を造っとったらあかん!」と、安全な米で酢を造りたい と各農家に無農薬栽培での米作りをお願いしました。
しかし、時代の逆行もあって、すんなりとは行きませんでした。2年の歳月をかけて、農家さんの奥さん方に、新鮮な魚を手土産に足げく通いつづけ信頼を得てのスタートでした。

20年前の父の決断

20年前には父が自社の田んぼを決断しました。

そして契約農家さんには、除草機などの専用機械を買って無償で使ってもらい、さらにお米の買取り価格はJAなどの通常価格の3倍で買い取ることをしている。結果的に飯尾醸造用の無農薬米を作っていただいた方が農家さんの収入は増える。環境が良くなる、地域が活きる。
このような仕組みを祖父の代からつくり、生産者との二人三脚を続けている。

今現在も、この関係性が基盤となっているため、もし50年前に祖父が決断していなかったら、飯尾醸造は、今存在していなかったかもしれない。
「時代ごとにそれぞれの意思決定を重ねてきたんだな」と父、祖父を尊敬されている5代目・飯尾社長。
先祖、両親への感謝、すてきですね。

先代からの想いを引き継ぎ、今

お酢の生産量は20年前の4代目・父の代より2割少ないとのこと。
契約農家さんも減ってきており、全体としてお米が減った分お酢を作る量も減産している。
しかし、量が減っても売上と利益が伸びるようにと彰浩さんは考え進めてきた結果、売上は20年前より4割増を実現している。スタッフの数も倍となっている。

今後もお米の生産量をキープするため、農家さんを増やす施策や、新規の農家さんとの契約を予定している。
(丹後の農家さんなら誰でもいいわけではなく、農薬を使用する田んぼと隣接している場合もあるので、農家さんというより圃場単位で契約している。また圃場ごとにお米のサンプルを取り、玄米ではなく籾の状態で293種類の残留農薬検査に掛けて化学物質を検査し、不検出のものだけを使うという徹底ぶりです。)

子供の頃から共に仕事をしていた感覚

小学生の頃の思い出

「お酢の杜氏はハタチぐらいからうちで働いてくれている人で、すでに37〜38年の勤務歴がある人です。
私が小学校の時には昼休みにキャッチボールしてもらったりしましたし、すごく優しい人で、それが後輩や周囲の人にも伝わっているように思います。」
と彰浩さんは語る。
そして、代替わりをつなぐ熟練杜氏さんたち。お互いに尊敬しあう雰囲気が感じられます。

中学生の共同開発の思い出

お酢の用途別製品の先駆者的な発案者は、4代目の父・毅(つよし)であった。
シャブシャブ専用酢の開発時期には、1ケ月くらいシャブシャブを食べ続けた記憶があるとのこと。
中学生の頃のその時は、「たべて一緒に仕事している感じ」だったと話す飯尾さん。
やはり事業を、家族みんなで育ててきた、そんな家庭環境に育ったのですね。

大学進学も父の製品開発の悩み解決が主目的

四代目は、当時、酢の売れ行きに悩んでいた。
純米酢独特の香りに好みが分かれ、その香りの対処方法に試案していた時だった。
飯尾さんは「東京農大の研究室で、酢の香りの研究をして欲しい」との、父の製品開発の悩みを解決すべく、進路を決めたとのこと。

「純米富士酢」は、昔ながらの製法のため、米酢本来の芳醇な香りがする。
しかし市場の大半を占める速醸の酢に慣れた人たちには、「純米富士酢」の香りを敬遠する人も少なくなく、いいものを造っているというだけで売れないという現実があった。

飯尾さんは大学院まで行ったが、そこで問題の解決にまでは至らなかったが、実務に入ってから、現場を踏まえた発想の逆転で、見事に問題を解決し、新たな製品を世に産み出した。それは、香りの改善だけでなく、まろやかさが増し、旨みがたっぷり含まれたお酢。

飯尾醸造が20年来夢見てきた「大吟醸のように繊細で、しかも旨みがあるお酢」。

「富士酢プレミアム」となり、4代目・父と、共に喜びあったとのこと。
間違いなく、ご先祖様たちも一緒に喜んでくれていますよね。

経営理念は「モテるお酢屋」

先代から引き継いだ時
それまで父、祖父の言葉、実践を言語化して経営理念を作ったという。それが、

「モテるお酢屋」

お酢を中心にして、買って使ってくださるユーザー皆さん、働いている社員、そして取引先の皆さん、生産者の仲間、製造に欠かせない地元と原料生産者、この6者からモテる存在であるために何をしたらいいのか、と優先順位を意識している。

参考文献:モテるお酢屋・飯尾醸造に聞く、伝統の継承と地元に還元するための覚悟
(https://www.persol-group.co.jp/sustainability/well-being/article/23062101/)

弱者戦略・強烈なファンづくり(TV放映内容+α解説)

1.徹底的に本物にこだわる

「富士酢」世界で唯一の御酢づくりとは

他のお酢屋さんとの決定的な違いは、お酢の作り方。
今市場のほとんどのお酢は、95%濃度の醸造アルコールを添加して作られている。
しかし、飯尾醸造では、創業以来変わらない伝統製法を続けている。
無農薬の米を使って、杜氏が麹から日本酒をつくり、それを原料にして約100~200日間かけたお酢づくり。
大手製品と比べると原材料費は50倍、時間も50倍とのこと。

この手間をかけて本物をやることが、大手に真似できない、
結果的に独自の世界を産み出していける。

飯野社長の声に力が入っていた。

2.大手が作らない商品

ものづくりの方法もさることながら、製品開発においても、利用用途をしぼったニッチな商品づくりで、大手が作らない商品を開発。
手巻きすし専用、シャブシャブ専用、ピクルス専用、中華料理専用・・・と。
現在は15種類あるという。
一昔前は、家庭で、お砂糖や出汁など、用途にあわせてお酢をアレンジしていたが、現代においては、共働きも増え、そのまますぐ使える利便性はとても大切。

と家庭、主婦目線の飯尾社長のコメントがあった。
製品開発は、基本的に飯尾社長おひとりが担当されているとのこと。
なかには没になった商品もあったとのことだが、積極的に大手の逆を狙っていく手法は、世界的ナンバーワンブランドの企業コカ・コーラ社での経験がまさに活きてきているのでしょう。

3.応援団をつくる

蔵見学、田植え、稲刈りのイベントなど、熱烈なファンのリピート率は7割。
大手のやるマーケットリサーチを手放して、目の前のユーザーに、本気で向かい合う。
広告宣言なし、営業マンなし、ECサイトへの出店もなし。新規のお客さんを振り向かせるためのことよりも、まずは既存のお客さんのためにできることをする。
そう決めて続けているうちに、メディアで取り上げていただいたり、口コミなどが増えて、結果的に新規のお客さんも増えてきた。

平成19(2007)年から田植えと稲刈りの体験会を始めた。
最初の年の参加者は、知り合いや取引先の方々が数名のみだったが、翌年からは通販のお客様も増え、今では毎年のべ100名以上のお手伝い参加をいただく。
自分が植えた苗や刈った稲がお酢になって手元に戻ってくる仕組みなど、顔の見える作り手とユーザーの交流の場づくりは、工夫に常に余念がない。

続・強烈なファンづくり、発酵蔵元だからこそ

京都・丹後地方を、イタリア「サンセバスチャン」のような、世界的な美食の町へ

おおきな展望をもち、そして、一番のファンづくりは、スタッフさんたちから。
従業員は社員もパートさんも、自社製品は全部タダとのこと。
期間や本数に制限もなく、決まった用紙に希望を書いて出せばスタッフさんは、お酢がもらえる。

「製造でも販売でも、一人ひとりの全ての仕事が関わっているのに、例えば他社のお酢よりも高いから自宅では他のお酢を使っていたりしたら、なんか悲しいじゃないですか。」

とは、5代目・飯尾社長の言葉。

本物のお酢の違い、ミシュランに認められる理由

時間と手間はかかっても「古式静置発酵」でお酢を造ります。
無農薬※1のおいしい米を贅沢に使い、「静置発酵」で時間をかけて造った「富士酢」の味は、しっかり酸っぱいのにツンツンせず、まろやかです。 お米の芳醇な香り、濃厚なコクと旨みがあります。
実際に数値を分析すると、富士酢は酢酸の比率が低いことが分かりました。「酢酸」とは、強い酸味と刺激臭を持つ有機酸。揮発酸で、蒸発しやすい酸です。一般的な米酢は99%が酢酸ですが、富士酢は酢酸が86%で不揮発酸の乳酸、コハク酸、リンゴ酸など、穏やかな酸が多いのが特徴です。ツンとせず、酸が飛びづらいので酢飯にするとおいしさが長持ちすることを実感いただけると思います。
飯野醸造HPより(https://www.iio-jozo.co.jp/about/)

こんなすばらしいお酢が、ミシュランに認められるきっかけになったのも、
銀座「てんぷら近藤」(ミシュラン2つ星・16年)の店主、近藤文夫さんとのご縁でした。
そのお店に招待してくれたのは、熱烈ファンの方だったとのこと。
飯野さんの真摯な実践が、物語の原点のような気がしますね。

世界シャリサミット

飯尾さんは、2018年から「江戸前シャリ研究所」を設立。
年に1回、「世界シャリサミット」という酢飯のサミットを開催されている。

毎年、世界中からミシュランガイドの星を持つ方もふくめて4〜50人の寿司職人さんが宮津に集う。
どうすればシャリがもっと美味しくなるか、だけでなく、醤油や海苔、米などの日本トップクラスの生産者など、飯尾さんが新しい技術、発想、未知の食材を提供できる講師を招いたりし、寿司職人さんや生産者さんたちの世界的な交流の場となっている。
(近年は、毎回、申込多数で抽選になっているとのこと)

参考文献:お酢屋「飯尾醸造」の経営をV字回復させた5代目が「町」と「人」に投資する理由 – ロコラバ
(https://musicbird.jp/cfm/biz/loco-lovers/iio-jozo/)

まとめ

「富士酢醸造元・飯尾醸造」5代目・飯尾彰浩さんが仕掛ける、
弱者戦略・熱烈ファンづくりをまとめてみます。

・飯尾彰浩さんの経営者DNA原点・祖父、父

・弱者の戦略とは(TV放映内容+α解説)
1)徹底的に本物にこだわる・・・手間暇かけて全行程に自ら関わる、大規模にはできない絶対の独自性。
2)大手が作らない商品・・・商品用途を絞り込んだニッチ製品の開発。
3)応援団をつくる・・・ここが一番のポイント。
1)、2)を真摯にやるからこその、現場見学、現場体験で、ユーザーさんと生産者の一体化が生まれる。
ユーザーさんは、非日常の楽しみ、製品づくりへ関われた喜び。
生産者は、顔の見えるユーザーさんたちの期待に応える、更なる真摯なモノづくりへ。
この好循環、相乗効果。

・さらに輪をかけて弱者戦略・発酵蔵元ならではのアイデア展開。
ひとづくり、まちづくりの先導役です。
観光客を呼び込む魅力的な食の町へ育てるべく、町の料理人をあつめ試食勉強会の開催、
そして酢の文化を世界へ発信。シャリサミットの企画。京都宮津の地を聖地化、継続開催中。
不動産事業も手掛け、自社のレストラン出店から、出店プロデュース。
さらには、移住の呼びかけ、斡旋まで。
まさにこの先導役、コンサルタントの役割は、社会を発酵させる杜氏さんではないでしょうか。

・ご家族の輪、スタッフ、ユーザー、そして関わる全ての方々と家族のつながりのような関係性。
彰浩さんの奥様、綾子さんとは、彼女の以前の勤務先キッチンメーカーでのご縁とのこと。
酢をきっかけにお料理でつながりご結婚。
家づくりには、同級生の家具デザイン会社さんに依頼されたり、
※参考記事:経年変化が居心地をつくる家族、仲間と、美味しいものを囲む家
〜#01 飯尾醸造5代目 飯尾彰浩さん 〜(https://aria-kyoto.jp/lives/interview/1136/)

本当にすべてに、ご縁を、地元を活かす(彰浩さん風に言えば「モテる」)実践をされています。

お母様のさとみさんは、パッケージデザインを担当されているようですね。
「京都デザイン優品」にも選定されたり、
彰浩さんの、二卵性双生児・妹の淳子さんは、お酢のレシピを考案や、
コピーライターやホームページ制作を担当。
5代目も、ますます和、輪、あったか家族雰囲気の人づくり経営を継承されているようです。

カンブリア宮殿さまの企画を連続して拝見するなかで、
会社の規模にかかわらず、伸びている会社に共通するポイントに感じられました。

感謝と共に、皆様のますますのご発展を心より応援しております。

最後までお読みいただきありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

セミナー企画の仕事を20年ほどしております。
その中で経営者、心理学、心、社会の仕組みに必然的に興味を持ち、その延長で、気になる情報をブログで発信しはじめました。

世界に影響を与えている出来事、背景、人物からアニメまで、それらの情報を学びながら、まとめていきますので、読者の皆様の知りたい情報入手の時間短縮や、へぇー、ほー、なるほど! になれば、うれしいなと思っています。

目次